|
夜明けのゴリゴリ

30年も昔は、サーフィン用のWAXを手に入れるのも一苦労で、時々は仏壇のロウソクを代用したりもした。しばらくすると、アメリカから専用WAXが大量に輸入されるようになって、ご先祖さまにバチアタリといわれそうな奇行はせずにすむようになった。そのWAXは、みなさんご存知のSEXWAXという、いかにもアメリカンが好みそうな洒落た名前のものだ。若かったせいもあって、はじめてこのWAXの名前を聞いた時にはクラクラしたし「サーファーになった」ことを実感した。そういえば、ウエットスーツの老舗オニール社のゴムは、当時、アニマルスキンと呼ばれていて、人目もはばからずに「SEXWAXだ、アニマルスキンだ、」なんだかんだ騒いでいた会話は、知らない人が聞いたら、全く変態じみたものだったかもしれない。それぞれのサーフショップには、このSEXWAXのココナッツフレイバーが充満していて、ほんと良い雰囲気だった。今、そういう匂いの充満するショップはなくなってしまった。
しばらくの間は、このSEXWAXがサーファーの間では圧倒的なシェアを誇っていたが、ここ数年、いろいろなWAXが登場し、その性能も高めていることから群雄割拠の時代に入ったといえる。中には二度塗りすると効果の上がるようなものがあったりで、買うほうもかなり迷う様子だが、正直、多くは違わない。ヘタな奴は何を塗ってもヘタだし、WAX買うのに迷っているうちに風がオンショアになってしまうから、そういうことで長時間悩まないほうがよい。しかし、このWAXには季節、つまり水温にあわせた設定がされている。冬用あり、春秋あり、夏用あり、真夏用もある。何が違うのかというと、硬さが違うわけで、夏は硬く、冬は柔らかいWAXを使う(サーファーなら誰でも知っている)。しかるに、冬は気温が下がっていてどうしてもWAXが硬くなってしまう。だから、そいつをボードに塗る時の音も、当然ゴリゴリと凄い音がする。冬の夜明け間近、アサイチでやってきたサーファーのその音で起きてしまうことが何回もある。サーフショップのオヤジにとってはたまらない騒音公害である。2階で寝ていても十分な目覚まし音になるし、私くらいの経験を積むと、WAXを塗る音でだいたい誰かがわかる。塗るタイミングで波の良し悪しがわかることもある。
どんなに寒い朝でも朝一番に海に入るサーファーが好きだ。自分の経験上からも、朝一番の海から学ぶことが一番多いように思うし、波だって良い場合が多い。ニアスでもヤップでもWAでもバリでもハワイでも、どこでも忘れられない波は、全部朝日の中にあった。朝焼けのJ-BAYのラインナップこそ私の見果てぬ夢だが、今年あたりに実現させたい。こんなことで感心する前に、深酒を止め、感性を研ぎ澄ましたほうがいい。夜明けのゴリゴリが大きくなると共に、和田浦も本格的な冬へと向かって行く。
2000-12-01
|